2021年3月14日(日)、富山市内にて「INNOVATIVE SPACE DAY」(イノスペ)が開催されました。

イノスペとは、新型コロナウィルスの影響で1カ所の会場に集まるイベントの開催が難しくなったことをきっかけに、会場を富山市内の5カ所に分散しながらリアルとオンラインの同時進行で行なう、「未来の富山のかたち」を体験できるイベントです。

第一部では『INNOVATIVE SPACE』と称された5カ所に集まった参加者が、それぞれの特徴の説明を受け、株式会社ロフトワーク代表取締役・林 千晶さんによる講演『イノベーティブな空間の創り方』を受講。

その上で、第二部ではランチタイムのあとに5カ所の会場を移動・周遊し、第三部ではワークショップ『イノベーティブスペースを活用したニュープロジェクトを考えよう』を会場で行ないました。

今回参画した施設は、交流・共創スペースの『Sketch Lab(スケッチラボ)』、インキュベーション施設の『HATCH(ハッチ)』、泊まれる図書館『寄処(よすが)』、イベント&シェアスペースの『花水木ノ庭(はなみずきのにわ)』、『RAIL SIDE TABLE(レールサイドテーブル)』の5カ所です。

当日の様子を前半・後半の2回に分けてお届けするイベントレポートの前半では、第一部の様子をお知らせします。

## 個性豊かな全5カ所が登場

第一部では、交流・共創スペースの『Sketch Lab(スケッチラボ)』、インキュベーション施設の『HATCH(ハッチ)』、泊まれる図書館『寄処(よすが)』、イベント&シェアスペースの『花水木ノ庭(はなみずきのにわ)』、『RAIL SIDE TABLE(レールサイドテーブル)』の5カ所の説明から行なわれました。

はじめにマイクを持ったのは、会員制コワーキングスペース『Sketch Lab』の中村さん。
『Sketch Lab』は学生・社会人が交流したり、仕事をしたりできる場になっています。「Sketch Labでは、立場や年代の違う人が出入りしているので、そういう人と交流するなかで新しい気づきがあったりすると思うんです。そこから新しいことをはじめる動きが広がるのではないかと期待しています」と話しました。また、現在、富山市で人口が減っていることにも触れ「課題があっても行政だけで解決するのは難しいんです。Sketch Labでは富山市の職員が日常的に出入りしているので、僕らとコミュニケーションを取りながら考えられるし、職員とフラットな立ち位置で議論しながら新しいものを生み出す場所になったら嬉しいです」と今後の展望を語りました。

続いて、日本海ラボが運営している『HATCH(ハッチ)』より今泉さんが登場。昨年12月にオープンしたばかりの『HATCH』は「あなたのチャレンジを全力でサポートします」をテーマに、起業に興味がある人に向けた場所だと説明しました。「『HATCH』という名前は、若者の明るい未来を開く扉をイメージして命名しました」と今泉さん。家のような気持ちで足を運んでもらいたいという気持ちを表しました。『HATCH』の特徴は、起業に興味のある人を支援するだけではなく、ワークショップを開催したり、北陸ビジネスプランコンテストの参加もサポートしたりしていること。さらに、24時間365日使える仕組みになっており、いつでも利用できることをアピールしました。

『HATCH』の次は、泊まれる図書館『寄処(よすが)』の運営メンバーより⾼⾒さん、林さんが登場。諏訪川原駅向かいにあるため、アクセスが便利であることを1番にアピールしました。『寄処』に置いてある本は、近隣の企業や学生に寄付してもらったもの。「いらなくなった本がおうちにある方や『この本を学生におすすめしたい!』という企業の方はぜひ遊びに来てください!」と呼びかけました。『寄処』はもともとゲストハウスとして開業しましたが、新型コロナウィルスの影響を受け、さまざまな人に親しんでもらうために泊まれる図書館としてリニューアルオープン。コンセプトは開業時から変わらず『旅人・社会人・学生が交流できる場』で、交流スペースもあり、さまざまな価値観と出会い、気づきを共有できる場所にしたいと、熱い思いを話しました。

次は、イベント&シェアスペースの『花水木ノ庭(はなみずきのにわ)』の登場です。
『花水木ノ庭』のピロティ空間では“不要と思われているものに価値を見出す”サーキュレットマルシェとしてを開催しており、使われなくなったタンスや木彫りの熊に回収し、アーティストさんに絵付けをしてもらったものを販売したり、雑貨屋の開業準備を進めたりしているそう。ひとつひとつの作品への愛溢れた説明のあと「地球に優しく、かっこいいものを集めています」と『花水木ノ庭』ならではの魅力をアピールしました。

同じくイベント&シェアスペースの『RAIL SIDE TABLE(レールサイドテーブル)』からは種昂さんが登場。築30年以上の古いビルに出会い、その2階に設計事務所を構えることになり、「路面電車が見られる魅力を活かして新しい場所を作りたいと思いました」と『RAIL SIDE TABLE』を開業するまでの経緯を振り返りました。

そんな『RAIL SIDE TABLE』の大きな魅力はキッチンがあること。会議としてレンタルしたあとに食事をしたり、料理教室を開催したりと、さまざまな使い方を推奨しています。路面電車の見える空間を活かしながら交流できる空間をつくり、街中とつながることで、「ここを起点に町とのつながりができたらいいなと思っています」と話しました。

## 林千晶さん「変わり続けることをポリシーにおくことをポリシーにした場所が増えることを願っています」

5カ所の紹介が終わったあとは、株式会社ロフトワーク代表取締役・林千晶さんによる講演『イノベーティブな空間の創り方』へ。

早稲⽥⼤学商学部、ボストン⼤学⼤学院ジャーナリズム学科を卒業した林さんは、2000年にロフトワークを起業。Webデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティティデザイン、空間デザインなど、多くのプロジェクトを手がけ、グッドデザイン賞審査委員なども担当しています。

そんな林さんは「目の前にいる人だけではなく、5つの場所で聞かれるなんて不思議な感じがしています」と、オンラインならではのイベントへの感想を語ったあとに、ロフトワークの仕組みを解説。「今日ここに集まっている人たちは、未来を、明日を作りたいという、私たちと同じような志を持っていると思います」と語りかけました。

ロフトワークの行なうさまざまなプロジェクトを解説していくなかで、渋谷に誕生した「問い」を起点とした共創施設『SHIBUYA QWS』も紹介。“問いから生まれた可能性を社会に放つ”というコンセプトのもと、「コミュニティ」「空間」「プログラム」の3つの軸で価値を提供していると話しました。

『SHIBUYA QWS』は会員制コワーキングスペースとしても運営されており、本来ひとり25000円のところを、3人が集まりプロジェクトとして組むことでひとり15000円に割引する仕組みを作っていると説明。「新しいことをやりたい、こういう会社を作りたいと思うのはひとりではなく、最低3人必要だと思ったのでこのような仕組みにしました」と、林さん。コミュニケーションを作っていく場づくりを大切にしていることをアピールしました。

最後に、新しいプロジェクトを考える上で意識したいこととして「これからはいろんな人たちと出会える方法を考えたり、もっと10代・20代の人たちの意見を聞いたりした方がいいと考えています。だからこそ、変わり続けることをポリシーにおくことをポリシーにした場所が増えることを願っています」と締めました。

林さんの講演をもって第一部は終了し、第二部のランチタイム・ワープタイムのあと行なわれた第三部のワークショップの様子は、後編でお届けします。